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「はぁ、はぁ・・・産まれ・・た?」

俺の問いかけに誰も答えようとしない。

「シャナ?せんせ?」

産声が響き渡る中、俺の目に飛び込んで来たのは・・・

「・・・・え?」

抱き合うように身体を丸めている・・・小さな・・・

「双子・・・?」

二人をあわせてやっと一人分の身体の大きさで、それでもしっかりした
顔立ちをしていた。

二人の胸には、半円の模様。
それは俺のお腹に刻まれたあの模様そっくりだった。

先生は言葉を発することもなくボロボロと泣いている。

その状態のまま俺に二人の赤ん坊をゆっくりと抱かせてくれた。

「あったかい・・・よく、産まれて来てくれたね。」

なんとも言えない気分だった。

愛しくて愛しくて、いつの間にか俺の目からも涙があふれて来た。

死を見守る涙に比べて、
誕生を見守る涙はなんて暖かいんだろう。

「わ、私は・・・この瞬間に立ちあえて本当に、本当に・・・」

先生の言葉はそれ以上続かなかった。

「産まれて来たこの光達のなんと眩しい事か・・・」

シャナはそう言うと、子供ごと優しく俺を抱きしめてくれた。

「先生、こんなに小さくても、大丈夫なのかな?」

俺がそう尋ねると、涙を拭ってにっこりと微笑んでくれた。

「問題ありませんよ。成長する速さと同様、個人差がありますので。」

「良かった・・・ヒカリ、ミライ」

「希、もう名を決めたのか?」

“ヒカリ”と“ミライ”この子達の顔を見たらすぐにこの名前が浮かんだ。

「なんだかこの子達の顔を見たら自然に出てきて・・・
光と未来、この子達には光に溢れた未来が待っていて欲しいから」

「そうか、良い名だな。」

「俺がこの子達の名前を付けてもいいの?」

「もちろんだ!とても良い名だと思うぞ。」

俺に似た黒髪の方は男の子で、シャナに似た水色の髪は女の子だった。
でも顔つきはなんとなく男の子の方がシャナに似ていて、
女の子の方が俺に似ているようだった。

「可愛いなぁ・・・」

本当に可愛い。この子達のする事ならなんでも可愛いと思えるんだろうな。
俺はもうすでに親バカになってしまいそうだ。

「あ・・・シャナ、この子達の瞳の色」

ほんの少しだけ開いた二人の瞳が薄紫で、
あの花と俺の首飾りと同じ色をしていた。

「ん?・・・これは、あの花と同じ!?
胸の模様といい、正しく栄華の証だな!」

シャナは物凄く嬉しそうだった。
そんな様子を見て俺もますます嬉しくなった。

「希さま、少しお休み下さいませ。
ご出産では思っている以上に体力を使われているのですよ。」

先生が専用のベッドに子供達を並んで寝かせた後、
俺の身体の様子も診てくれた。

特に問題はなかったようで、休息をしっかり取る事と、
これからも栄養のバランスの良い食事を心がけるようにと言われただけだった。

双子という事自体が珍しく、また栄華である事で何が起こるか
予想が出来ない事から、これからも頻繁に様子をみに来てくれるという
先生の言葉に頷いた。

「先生、本当にありがとうございました!
先生が良くしてくれたからこそこうして無事に出産出来ました!」

「私はほんの少しお手伝いをしただけです。
希様の努力と愛情でお子様も無事にこの世に生を受ける事が出来たのですよ。」

先生はまたにっこりと笑うと「良く頑張りましたな」
と言って優しく手を握ってくれた。

おじいちゃんなんて居た事ないけど、居たらこんな感じなのかなと思うと
心がとても暖かくなった。

この子達を立派に育てなければと、決意を新たにしたのだった。






 
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