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そして目まぐるしく毎日が過ぎ、時は流れ・・・
ヒカリとミライも順調に成長していた。

「私、お父様みたいな方と結婚するなんて嫌だわ。」

いつも通り食卓を囲んでいると、
娘であるミライが急にそんな事を言い出すものだから、
思わずその場にいた全員の視線が彼女に注がれる事になった。

突拍子もないミライの発言に対して、息子のヒカリがぽつりと呟く。

「僕はお母様みたいな方と結婚したいけどな。」

その言葉に俺は思わずヒカリの頭を撫でたが、
シャナは苦笑いをしてミライと話を続けている。

「お母様に似たお前にそんな事を言われて、私は複雑だよ。」

「あら、だってお父様はお母様が好き過ぎるわ!
私、そういうのって何だか息苦しく感じるの。何にも縛られたくないわ!」

シャナはミライのおでこをコツンと小突くと、にっこりと微笑んだ。

「お前は本当に私に似ているな。
でもな、ミライ・・・お前も心から愛する人が出来れば分かるよ。」

「昔はお父様も私みたいに考えてたの?」

「まあな。でも希に出会って自分が愚かだったと気付いたよ。
出会ったあの時の感動は今でも憶えてるし、愛しい気持ちは毎日大きくなってる。」

子供たちの前でなんて恥ずかしい事を言うのだろうと思って
顔を赤くしてしまうと、ミライが溜め息を吐いた。

「もうっ!お父様!私達子供の前でそんな恥ずかしい事言わないで!
お母様も毎日聞いてるような台詞で赤くならないで!」

「ミライ、それくらいにしときなよ。今はご飯の時間だよ。」

声を荒げるミライに、ヒカリは淡々と告げる。

「何よヒカリ!あんたは恥ずかしいと思わないの!?」

「思わない。お父様とお母様が愛し合ってこそ、
この国も僕たちも幸せでいられるんだと思うから。
ミライはお父様がお母様の事愛していなくても良いって言うの?」

「そんな事言ってない!恥ずかしいって言ってるだけ!」

ヒカリとミライは双子でも全く性格が違う。
正反対と言ってもいい。

ミライは激しい気性だけどとても素直だし、
ヒカリは物静かだけど割と頑固。

そんな二人を見ていると、俺は子供たちが双子で産まれた事には
理由があったんだろうと考えるようになっていた。

栄華として産まれた事を、いつか重荷に感じてしまう事があるだろうか?

この子達が苦しい時には、シャナと二人で出来得る全ての事をしてあげよう。

そして、いつか俺やシャナが2人の側を離れる時が来てしまっても、
その重荷を一人で背負わずに、補い合ってくれたらいい。

「シャナ・・・俺、シャナに出会えて、子供たちもいて本当に幸せだ。」

そう言ってシャナを見つめると、シャナは優しく微笑んで、
軽い口付けをしてくれる。

それを見ていたミライの心底呆れた声が耳に届いてハッとしたが、
笑って返すしかなかった。

「・・・・・・もう、お父様もお母様もほんとに嫌になっちゃう」

「僕は嬉しいよ。お母様が嬉しそうだから。」

「・・・・はぁ〜・・・何だか私だけ騒いで馬鹿みたい。
もういいわよ。早くお食事済ませましょ!私続きが読みたい本があるの。
いいでしょ?お母様。」

「もちろん、いいよ。」

椅子に深く座り直し、食事を再開させたミライの読みたい本とは、
RPGのようなストーリーで、どうやら騎士や勇者のような存在に憧れているらしい。

お姫様には憧れないの?と聞いた時のミライの答えに笑ってしまったのは、
昔自分がシャナに向けて言った言葉と同じだったからだ。

“守られて、自分だけが安全なんて嫌よ!” と。














2人の産まれた日の事、後から聞いた事だったが
俺がこの世界にやって来た時のように月が強く輝いていたそうだ。

そして今はあの岩山の向こうに咲く花たちがその範囲を広げ、
岩山だった場所が緑に囲まれている。

全てが光輝き、花が咲き乱れる世界があるという。

それは夢物語かも知れないし、願望の例えかも知れない。

けれど今まさに、そんな世界がここにあるんだ。

この子達の未来には今よりもっと光が溢れていますように・・・







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一応の終着でございます。
機会があればヒカリとミライの大きくなった時の事を書けたらいいなと思います。
あと希とシャナの番外編も。
ここまで一体何年の月日が流れた事か・・・

異世界トリップが好きなだけでサイトを立ち上げて時には全く更新しなかったりを
繰り返して来ましたが、不十分ながらも終わらせる事が出来て良かったです。

お付き合いありがとうございました!




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