5 残酷な表現があります。苦手な方は閲覧を避けて下さい。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ (お前は黙って俺の言いなりになっていればいいんだ。ほら、 今からお前の大好きなものをぶち込んでやるからな) “助けて” (も・・・ぃやだぁ!!やめて!やめてよ!) (うるせえ!!わめくんじゃねえ!それ以上わめいたらその口縫いつけてやるからな!) “殺してやる” (ひっ!) (嫌ならこれをその口で大きくするんだな・・・歯でも立ててみろ? お前のケツにナイフつっこんで、その後じっくり犯してやる。 血でドロドロになって気持ちいいかもなぁ??あ?) “誰か” (ぅ・・・うぅっ・・・) (っあぁ・・・いい・・・うまくなったなぁ・・・ お前はこれが大好きだもんなぁ。うまいだろう? 最後はちゃんと飲み込むんだぞ。) “殺してやる” 気持ち・・・わるい。 下卑た笑いを浮かべてこんな幼い少年に無理やり奉仕させている男が。 その間中ずっと繰り返される助けを求める言葉と “殺してやる”という呪文のような言葉。 誰もこの声に気がつかなかっただなんて。 彼の記憶に手が出せるはずがない。 でも、それでも、こんなに苦しんでる姿を目の当たりにして 無駄でもなんでも、なにもせずになんていられない! 男の顔を殴ってやろうと思いっきりこぶしを振りあげて、 勢いのまま殴り飛ばす!! 「ぐあ!!」 手ごたえと共に男が地面にたたきつけられる。どうやら気を失ったようだ。 「あ・・・」 本当に当たってしまった・・・拳が痛い。 というか、俺は過去に来てしまった?? 茫然とする俺の前に同じく茫然として俺を見上げている少年がいる。 こ、これは・・・逃げなければ!男の目が覚める前に! とりあえず逃げようとこの建物を出る。 「君も来るんだよ!!」 そう言って手を伸ばすと彼は急いで服を正して俺の腕にしがみついてきた。 この建物はどうやら人里から離れているらしい。人の気配をまるで感じない。 これでは誰も気づかないはずだ。 「お兄さん、どうして助けてくれたの??」 何も考えていなかった俺はこの質問にまともに答える事が出来なかった。 そもそも、過去を変えて良かったのだろうか・・・ いや・・・俺がここにいる時点ですでに十分に変わってしまっている。 そして、あそこで何もせず見て見ぬふりは出来なかった。 「あ、あそこを歩いていたら、何だか嫌な予感がしてね!」 「ふぅん・・・何にしても助かったよ!ありがとう!!・・・でも・・・」 笑顔になったかと思った途端に表情が曇ってしまった。 「きっと連れ戻されて、また酷い事される・・・ もう嫌だ。帰りたくないよ。」 帰りたくないのは当たり前だ。 でも、俺も身一つでこんな所に来てしまった。 どうやって来たのか分からなければ、帰り方も分からない。 これからどうしたものかと途方に暮れていると、 後ろの茂みの方からガサガサッという音がした。 俺は咄嗟に身構えた。さっきは不意打ちだったから上手くいったけれど。 本気で向かって来られたら 丸腰の俺ではどうやっても太刀打ちできないような気がする。 「あら? ねぇあなた!こんな所に人がいるわ。」 柔らかい女の人の声がしたと思ったら続いて大柄な男の人が顔をのぞかせた。 「本当だ。お前達、こんな人気のない所でどうしたんだ?」 茂みから出て来たのは恐れていた人物ではなく、見知らぬ夫婦だった。 その後、彼の服装が酷く乱れている事に対して俺が怪しまれたが、 彼が「この人が助けてくれたんです。」 と弁解してくれたためにすぐに誤解が解けた。 「疑ってごめんなさいね。少し遠いのだけれど、 うちで良ければ寄っていきなさいな。今ちょうど薪を拾いに行っていたのよ。 お風呂にでも入ってさっぱりするといいわ。」 と奥さんが申し出てくれた。 隣に居る旦那さんらしき人もうんうんと頷いている。 「え・・・でも・・・」 「私たちが悪人に見えるのならば無理にとは言わないわ。 でもそう見えないのならいらっしゃい。」 俺はどうしたものかと迷っていたが、 このままここにいて見つかって連れ戻された後の事を考えれば まだこの夫婦を信じた方が良い気がして 「宜しくお願いします」と頭を下げた。 奥さんが彼に近づいていき、 肩にかけていたストールをはずして彼の肩にかけた。 彼は一瞬たじろいだものの、 小さな声で「ありがとうございます」とつぶやいた。 坂を下った所に荷車と馬が待機しており、荷台に乗せもらって移動した。 その夫婦の家はそこからかなり離れた所にあった。 なんでも薪にするにはあの辺りにある乾燥した枝がいいという事らしかった。 距離がある方が都合がいい。 彼の顔もあの場所から離れれば離れる程安堵したものに変わっていく。 荷台から降りると奥さんが扉を開けて招き入れてくれた。 「さ、何もない家ですがどうぞ。」 招き入れられた家には、 きれいな刺繍の施された壁掛けや花などが飾られていた。 テーブルにつくように促された目の前の鍋敷きと思われるものにも 鮮やかな刺繍があった。 「きれいな刺繍ですね。」 「ふふ。それは私の趣味なのよ。褒めてくれてうれしいわ。 今あの人がお風呂を沸かしに行っているから、もう少ししたら入れるわよ。 先にあなたからね。えーっと・・・」 「リシャールです。」 口元に手を持っていき、彼を見て何か考えるような仕草をとった奥さんに、 彼が自分の名前を明かした。 そう言えば名前すら名乗っていなかった。 なのにためらいもせず見ず知らずの人間を招き入れるなんて、なんて人の良い夫婦なのだろう。 「あ、俺は国元希です。お世話になります。」 「希なんて変わった名前なのね。 よろしくね。リシャールくんに希くん。私はステラ、あの人はロジャーよ」 希くんて呼ばれるのは新鮮だな。 シャナは呼び捨てだし、他のみんなは様付けで呼ぶし・・・ みんな今頃どうしてるのかな。心配してるかな。 もしこのまま帰れなかったらどうしよう。 異世界に来る事といい、こうして時間を遡ってしまった事といい、 一体俺はどうなっているんだろうか。 今更ながらそんな事を考えていたら、二人にじっと見られていた。 「一人で百面相ね。思っている事が顔に出るタイプなのかしら?。 さぁ、お風呂が沸くまでまだ時間があるわ。お茶でもいかが? ちょうど家を出る前にお菓子を焼いていたのよ。」 今まで言葉数も少なく、身じろぎさえしなかった彼が“おかし”の言葉にぴくっと反応した。 「あ、僕、お菓子ってあんまり食べた事がなくて。知ってはいるんですけど・・・ だから前からどんなものかなって興味があって。」 ステラさんは憐れむでもなくにこっと笑って「うちのはオイシイわよー!」と言って 籠いっぱいのクッキーのような焼き菓子を差し出した。 「中に入っているこの木の実はね、あの人が殻を向いてくれたのよ。 あんな大きな身体でちまちました事が得意なのよ。意外でしょう?」 「意外とは心外だな。もう手伝ってやらんぞ」 俺達の後ろから入ってきたロジャーさんはムッとして腕を組んでいた。 「やぁねぇ!あなたが優しくて頼りがいがあって木の実の殻むきまで上手いなんて 私は知っているけど、この子達はあなたを知らないんだもの。 今からトクトクとあなたがどんなに素晴らしい人なのか教えてあげようとした所なのよっ」 「そ、そうか・・・」 「でね、黒髪の子が希くんで、青い髪の子がリシャールくんですって!」 ステラさんは話の切り替えがうまかった。 優しくて頼りがいがあるって褒めた後にさらっと 俺たちの話題にすり替えてしまった。 そうしている間にも素早くお湯を沸かしお茶を入れている。 ロジャーさんは褒められた事で気分が良くなったのか 「この菓子はうまいぞ」なんて言ってにこやかにテーブルにつく。 なんて微笑ましい夫婦なんだろう。 良い香りのするお茶を差し出され、早速お菓子に手を伸ばして一口食べた。 確かにものすごくおいしい!! 彼なんて相当気に行ったのか次々に口に運んでいく。 「おいしいです!僕、こんなに美味しいもの始めて食べました!」なんて言いながら。 ← → novel index top |