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身体がだるくてしょうがない・・・
 
あの薬の効力が薄れて来ているのが自分でも分かる。
いや・・・正しく言えば俺の身体が、薬ではカバー出来ない程
この土地の空気に蝕まれているのだろう。
今では上半身を起こすだけで精一杯だ。
 
確実に近づいてくる「死」を実感して、身体が震える。
ユリはそんな様子の俺をずっと心配そうに見ている。
そして「まだ、王に抱かれる覚悟は・・・」と様子を伺うように聞いてくる。
 
俺は一度もその質問に答えられずに居る。
 
夜眠る時、朝になったら息をしてない。なんてことにならない
保障などどこにもなくて、
その代わり、いつまでも寝られずに居る俺を優しく抱きしめてくれる人がいる。
だから夢の中に入っていけるのだ。
 
それ程に、今は王を信頼している。
覚悟など、とっくに出来ているのだ。
 
ただ、自分から覚悟が出来ているなんて言ったら
俺が誘っているように思われてしまうんじゃないかと不安なのだ。
 
生きるか死ぬかの時に、自分でも馬鹿じゃないかと思う。
 
でも、呆れさせたくないのだ。
こんな魅力のない身体を、誰が好き好んで抱きたいなど
と思うだろうか・・・
今は抱きたいと思っていても、いざ目の前にしたら萎えてしまうに
決まっている。
 
「希?入るよ。」

ガチャリと音を立てて扉が開く。
前にも言った通り、ノックもせずに入って来るのは王だけなので、
誰が入ってきたのかは直ぐに分かる。
 
「ユリ、すまないが、希と二人にして欲しい」

王の言葉に頷き、ユリは部屋を出て行く。
 
「身体の具合はどうだ?」

「良くは・・・ないです」

「・・・そうか・・・そうだな。痩せて、顔色も良くないな」

そう言ってベットサイドに腰掛け、俺の頬に手を当ててくる。
 
「今から言う事が、私の勘違いだったらそう言って欲しい」

「??」

「私はお前に嫌われてはいないと思っている」

その言葉に、俺は無言で頷く。

「そう思ったから言うが」
 
「このままではお前の命が危ないのは事実だ」

また、頷く。
 
「それでも、私と交わるのには耐えられないと言うなら、
私はお前に一日目覚めない薬を使ってその間に・・・」

「!?そんなの!無理やりするのと変わらないじゃないですか!」

「それでも、お前にずっと憎まれようと、お前が死ぬよりはいい!」
 
本当の事を、言ってしまった方がいいのだろうか・・・
もし俺が嫌だと拒んで、俺が寝ている間に行われる行為を
目覚めた時に覚えていないなんて、そんなのは嫌だ。
 
ただでさえ初めての行為なのだ。覚えておきたい。この人が、俺の事をどんな風に抱くのが知りたい。
そこまで考えて、俺の思考はどうなってるんだと自分を責めたい気になったが、これが本心なのだ。
俺は、王に抱かれてもいいと・・・思っている。
 
「お、俺・・・本当は、覚悟、出来ているんです・・・
貴方の事を信用しているんです。夜、たまらなく不安になる時も、貴方に
抱きしめられると安心できるし、それに嬉しい。
だから、何ていったらいいのか分からないけど・・・
その、好きだって、言って下さい!」

「ん?」

「貴方から好きだと行ってくれたら、
貴方から誘ってくれれば、俺は「うん」と言えます。」

我ながらズルイと思う。でも、こんな風にしか言えない。その気にさせるような、上手な誘い文句なんか知らない。
 
「あ、あと、もし俺の身体に幻滅したら言って下さい。
無理に、抱かなくていいし・・・それに
無理に抱かれてもうれしくな」
 
俺の言葉は、王の唇によってそこで遮られた。
暫く唇を重ねた後ゆっくりと唇を離し、抱きしめられる。
 
「そんな事、あるはずがないだろう・・・好きな相手の身体は、
無条件に美しく感じるものだ。そうでなくてもお前は美しい」
 
「好きだよ、希。お前を抱きたい・・・」
 
好きだよ・・・その甘い言葉の響きが、俺を酔わせる・・・

抱きたいと・・・
そう言った王の顔はとても美しくて、俺は思わず息を呑んでしまった。
 
美しい人だとしみじみと思う。
頬に触れる指から、熱が伝わってきて、
それだけで何故か胸が熱くなり、泣きたい様な気分になってくる。
 
その様子を見ている王が、心配そうに俺の顔を覗き込んで来た。
 
「どうした?恐いか?」

「いいえ・・・違うんです・・・自分でも、よく分からなくて
貴方の触れる指が熱くて、それが何故だか切なくて」

俺がそう言うと、王が微笑んで額に唇を落とした。
 
「私の気持ちがお前に流れ込んでいるのかもな・・・」

「え?」

「胸が熱くて、どうしようもない。
お前が好きだと叫び出したいくらいだ」
 
そんな事を言われて嬉しいと思う。
もう変えようのない事実だと実感してしまった。
・・・・・俺は王が好きだ。
 
「叫んだりしたら、皆に笑われてしまいますよ?」

「フッ・・・それは困るな。では、
叫ばない代わりに、お前にこの気持ちを全て受け止めてもらおう。」
 
言いながら、王が俺に覆いかぶさっってくる。
そして首筋に顔を埋めると、首筋にチュウッと吸い付いてきた。
ピリッとするその痛みが離れると、今度は服を脱がされる。
日本の浴衣のような構造の服では、簡単に脱がされてしまう。
 
その服が床に投げ捨てられ、その行き先を目で追う暇もなく
唇が重ねられる。
最初は優しく触れ合うだけのキスが、段々と深くなってくる。
 
「んっ・・・んん・・・っ」


こんな、鼻にかかった甘ったるい声が自分のどこから出るのだろう。
胸の突起をきつく摘まれて身体が跳ねる。


「や・・・ぃた・・・」

キュウっと身体が縮まってしまいそうになったが、
手も足も押さえつけられ、身動きが取れなくなってしまった。
 
目の前で俺を押さえつけている王が、
不適な笑みを浮かべる。
とても綺麗だが、それだけではない笑み。

「痛いだけなら、私の腹にある硬いものは何だろうな」

「・・・え?」
 
俺のソレが勃ちあがって、王のお腹を押し上げているようだ。
キスされて、ちょっと胸をいじられた、それだけのことなのに。
 
「あ・・・やだ・・・ごめんなさい」

「何故謝る」

「だって、こんな・・・ちょっと胸を触られただけで」
 
恥ずかしくて目を逸らそうとしたが、顎を掴まれてそれが遮られる。

「ならば私は、もっとお前に謝らなければいけなくなるではないか」

微笑みながらそう言われても、意味が分からない。
なぜ彼が俺に謝らなければならないのだろう・・・
 
「私は、お前に口付けをして、
胸を触っただけなのにもうこんなになっている」

そう言って腰に手を添えられ、王の腰に密着させられる。
俺の勃ち上がっているものに、他の硬いものが押し付けられる。
 
瞬時には理解出来なかったが、ソコから徐々に熱が伝わってきて、
俺の心拍数がグッと上がり、理解しざるを得なくなった。
 
つまり、王も、俺に触っただけで、ソレが・・・
 
「あ・・・王も?」

「ああ、触れただけで感じているよ」

恥ずかし気もなくそう言い切られて、逆に俺が恥ずかしくなる。
 
話していると、俺の腰に添えられた手が離れ、
今度はソレをキュっと握られた。
 
「あ・・・ん!王・・・」

「その、王と呼ぶのをやめようか・・・
それは、私の”名前”ではないからね・・・」





 
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