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とりあえず、手足が拘束されていてはトイレにだって行けない。

そう考えていたら、頭から離れなくなり、無性に行きたくなってしまった。

「トイレ。」

俺が急に声を出したものだから、江藤も少し驚いたらしく、肩が少し揺れた。

「香島さん・・・起きていたんですか」

「どうだっていいだろ。起きてたって起きていなくたって、
こんな風に縛られてたら何処にも行けないんだし。」

「・・・・・」

なんだよ。何か言えよ。

なんでそんな切なそうな顔すんだよ。

自分勝手に人の事拉致って犯したくせに!!

「分かりました。」

そう言って足を解放された。

腕はベッドからは解放されたが、代わりに手錠で後ろに回した両手首を固定された。

「変な考えはおこさないで下さいね。
逃げようとしたら、俺は貴方をどうするか分からない。」

その言葉に俺が口を開くことはなかった。

その代わり、全く別の話を江藤に振る事にした。

「お前、なんで会社員なんかやってるんだよ。さっきの電話聞いてたら、
お前が裏で何をやっているか大体想像がついた。」

「・・・聞かれてしまいましたか。」

「聞きたくて聞いたわけじゃない。聞こえて来たんだから仕方ないだろ。」

俺がそう言うと、江藤は何故か嬉しそうに微笑んだ。

「ああ、香島さんは本当に良いですね。」

江藤の言う意味が分からなかった。

俺の言っている事が「良い事」なわけではないのは考えなくたって分かる。

自分でも憎たらしい言い方だと思っているし。

「大体想像がついた事が正解だとしたら、普通恐くなるものじゃないですか?
知らない場所で拘束までされた上、犯されたんですからね。
なのに貴方は相変わらずの口調で俺と話してる。」

普通ならばそうだろう。

確かに昨日はとてつもない恐怖を感じたはずだった。

なのに何故か今は恐いと感じていないのだ。自分でもよく分からない。

「お前が会社での口調と変わらないからだろ。
お前だって無理やり犯した相手によくいつも通りでいられるな。」

「はは・・・確かにそうですね。」

少しの沈黙の後、江藤は薄く微笑みながら話を続けた。

「・・・俺が本当はどういう人間なのか、香島さんの想像は多分当たっています。
ウチの会社・・・地方とはいえ香島さんの勤める会社でもあるわけですが、
表向きや実際やってる事も一般企業と変わらないんですけど、
それだけではない何かっていうのがあって、俺はそこの部分を任されています。
詳しい事は、言えないんですけど・・・」

「な、んだって・・・」

まさか自分の勤めている会社がそういった組織と関わっているとは
思っていなかった。

「じゃあ、ウチの部署に来たのはなんでだ?
栄転とかそういう事じゃないのか?」

江藤は首を横に振る。

「東京で表に出て動くには不都合もリスクもありますからね。
それでも何かあった時のために、あまり遠い支社には出向けなかった。」

「最初はほんの気まぐれで。表の社会を知っておくのも悪くないと思って、
それで2年だけ、表に出る事にしたんです」

「香島さんの部署に配属されたのは偶然でした。でも・・・」

「でも・・・?」

聞き返してすぐ、しまったと思った。

あんまりにも真っ直ぐに江藤が俺を見つめて来たからだった。

目が合った瞬間、江藤は俺を引き寄せ、身体が軋む程強く抱き締めた。

「っ!!」

抵抗しようにも後ろ手に拘束されていてはそれも出来ない。

江藤はしばらくそうしていたが、何かを思いだしたように身体を離す。

「ああ、そういえばトイレ、でしたよね・・・」

江藤の瞳に明らかな熱を感じて、俺は少し後ずさる。

「両手が塞がって不便でしょう?手伝います。」

「っ!お前のせいだろ!?」

「そうですよ。だから責任持ってお手伝いします。」

腕を引かれ連れて行かれた先は、普通のトイレのイメージとは程遠い空間だった。

トイレには違いないが、ガラスで仕切られたシャワーブースが隣にある。

「浴室は別にありますので、今度は風呂にも一緒に入りましょうね。」

そう言うと、トイレの前に俺を立たせ、後ろから俺のを握ってくる。

「さあ、どうぞ」

「お前!!こんな事されて出るわけねぇだろ!!」

こんな状況で用を足すなんて出来るわけがない。恥ずかしいし屈辱的だ。

「照れてるんですか?可愛いですね。」

そう囁くと江藤は俺の首筋を舐め上げた。

「ひっ!」

俺が情けない声をあげると、行為はどんどんエスカレートしていった。






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